この文書はPivotal TrackerGetting Startedのページを永和システムマネジメントが翻訳したものです。開発元であるPivotal Labsの許可を得て公開しています(2010-04-09)。

Pivotal Tracker ヘルプ


はじめかた

Pivotal Tracker とは?

Pivotal Trackerは、シンプルな、ストーリーベースのプロジェクト計画づくりのためのツールです。Pivotal Trackerはチームの協調と、実世界での変化へのすばやい対応を可能にします。Pivotal Trackerはアジャイルソフトウェア開発手法に基づいたツールですが、さまざまな種類のプロジェクトに適用できます。Pivotal Trackerを使えば、立てた計画を現実に合わせようとして身動きが取れなくなることはありません。自分のなすべきことに集中できるのです。

Dashboard

紹介ビデオ


Pivotal Trackerをプロジェクトで使うにあたっては、アジャイル開発手法の知識が多少はあると役にたちます。エクストリームプログラミング(XP)であれば、このXPの入門記事をはじめとして、数多くの良質な記事をオンラインで見つけることができます。


マイレポート

ダッシュボード

Pivotal Trackerにログインすると、まず最初に表示されるのは自分の ダッシュボード(Dashboard)です。このページには、あなたが参加している全てのプロジェクト、最近の活動、Pivotal Trackerからの重要なお知らせが表示されます。

プロジェクトに招待されていれば、プロジェクト一覧にそのプロジェクトが表示されます。プロジェクトのリンクをクリックすると、そのプロジェクトのストーリーを表示します。新しいプロジェクトの作成は簡単です。ダッシュボードで"Create Project"ボタンをクリックし、プロジェクト名を入力した後にエンターキーを押すだけです。

プロジェクトページ

Pivotal Trackerで過ごす時間のほとんどは、プロジェクトページでのストーリーの操作になります。左上隅のプロジェクトドロップダウンメニューで表示するプロジェクトを切り替えられます。また、"View"メニューの上にあるプロジェクトのタブで切り替えることもできます。

それぞれのプロジェクトではパネル(panel)毎でストーリーを編集できます。最初にプロジェクトを表示したときには、"Current""Backlog"の二つのパネルが開いています。Currentパネルは、現在進行中のイテレーションです。Backlogパネルは将来のイテレーションです。それぞれのイテレーションには、チームのベロシティの上限に収まる範囲でストーリーが割り当てられます。これはつまり、Currentパネルのストーリーは現在のイテレーションで完了することが期待されているということです。

ストーリーを見る

他のパネルを開くには、パネルボタンバーに並んでいるボタンから対応するパネルのボタンをクリックするか、"View"メニューのドロップダウンリストから選ぶ、キーボードショートカットを使うといった方法があります(キーボードショートカットは'?'をタイプするとヘルプが出ます)

  • 完了(Done) -過去のイテレーション。完了したイテレーションについて、受け入れられた(Accepted)ストーリーが、検収された順序でソートされています。
  • アイスボックス(Icebox:冷凍庫のこと)- まだ優先順位づけがされていないストーリーです。優先順位がつけられていないストーリーは、いつまでも冷凍庫で「凍ったまま」なのです。優先順位をつける準備が整ったら、IceboxパネルからCurrentパネルあるいはBacklogパネルにドラッグして、優先順位の高い順に並べます。
  • リリース(Release) -プロジェクトのリリースマーカーです。このパネルに表示されているリリース上にストーリーをドラッグすると、そのストーリーをリリースに含めることができます。
  • 自分の担当(My Work) -あなたが作業の担当者になっているか、受け入れ担当者による確認を待っているストーリーです。
  • 履歴(History) -ストーリーの変更履歴です。
  • チャート(Chart) - リリースバーンダウンチャート、イテレーション毎のベロシティー、現在のイテレーションのバーンアップチャート、ストーリーの種類の内訳を表示します。
  • ラベルと検索(Label&Search) - プロジェクトごとのラベル(クリックできます)と、保存した検索条件を利用できます。
新しい物語

新しくストーリーを作成する

具体的に顧客に提供できる(deliverable)成果物や作業のことをストーリーとよびます。新しいストーリーを作成するには、プロジェクトページの上部にある"Add Story"ボタンをクリックするか、'a'キーを押します。すると、Iceboxパネルにストーリーの詳細ウィンドウが表示されます。新しいストーリーの作成にあたって必ず入力しなければならないのはタイトルだけです。タイトル以外はオプションなので、後で変更できます。ストーリーのタイトルには簡単で具体的な独立した要求を1文で書きます。たとえば「マネージャは購買発注を承認できる」といったようにです。ストーリーの詳細な内容は説明(Description)フィールドに記入します。

ストーリーを作成したユーザーが最初の"requester"(ストーリーを要求した担当者)として扱われますが、これはプルダウンからプロジェクトメンバーであれば誰にでも割り当てられます。理想をいえば"requester"はプロジェクトの顧客や顧客の代わりにストーリー���要求と受け入れ満足条件についての決定を下せる人物であることが望ましいでしょう。

"owns"のプルダウンにはストーリーの実装を担当する人を設定します。通常は開発者がこれを担当します。ストーリーの作成時には"owns"の設定は必須ではありません。Pivotal Trackerでは、誰であれストーリーを「開始」することができます。XPプロジェクトでよくあるイテレーションの進め方は、一つのストーリーを完了させてから、バックログの先頭に積んである次のストーリーに取りかかるというやり方です。これに従うならば、ストーリーに着手する時点で"owns"に担当者を設定するのがよいでしょう。

見積りのドロップダウンリストでは見積りポイントを選べます。見積りポイントは、そのストーリーが他のストーリーと比べて相対的にそれだけ複雑であるとかリスクがあるかを反映した値です。新しいストーリーは見積られていない状態(Unestimated)になっています。あとで見積もってもかまいません。実際のプロジェクトでは、ストーリーを開始する少し前に見積もることでしょう。ストーリーに着手する直前がもっともそのストーリーについて一番良く理解しているというのがその理由です。

ストーリーにはラベル(Label)を使ったタグ付けができます。既存のラベルから選ぶこともできますし、新たにラベルを作成することもできます。ドロップダウンリストで、既に選択したラベルを選ぶと、そのラベルをストーリーから削除できます。

ストーリーの各項目についてはあとからいつでも変更可能です。

ストーリーにコメントする

Pivotal Trackerでは、コメント(Comment)を使ってストーリーに関する議論をすすめていきます。チームメンバーであれば誰でもストーリーにコメントできます。コメントはストーリーをめぐる考察の足跡なので、削除できません。ストーリーへのあらゆるコメントは、明示的に通知をオフにしない限り、メールで通知されます。

見積り

ストーリーはポイントで見積もります。見積りは、ストーリー間の相対サイズであり、あるストーリーを完了させるために必要な作業量をあらわす指標です。見積りの値はチーム固有のものであり、チームが違えば、同じストーリーであっても見積りポイントは異なります。Pivotal Trackerを使いはじめたばかりであれば、何かしら具体的なものを基準にすると始めやすいでしょう。たとえば、ストーリーを完了させるのにかかる「理想日」や、プロジェクトでの典型的な機能を基準にするとよいでしょう。慣れてくれば、ポイントという概念にも次第に馴染んでいきます。

ストーリーの見積りにあたっては、プロジェクトで採用するポイントのスケールを選択します。Pivotal Trackerではプロジェクト毎に1つのスケールを採用します(3種類のスケールから選べます)。これはストーリーの粒度に一貫性をもたせることにつながります。一般的に、ほとんどのストーリーは小さくなります(1ポイントか2ポイント)。ストーリーが大きくなるにつれて、不確実性も大きくなります。これを防ぐためには、なるべくストーリーを小さく分割します。

制御点

ストーリーに見積りを入力するいちばん簡単な操作方法は、ストーリーにある見積りボタンをクリックすることです。見積りボタンはまだ見積もられていないストーリーにだけ表示されています。一旦ストーリーが見積もられると、見積りボタンの代わりに"Start"ボタンが表示されます。ストーリーの見積りを変更するには、ストーリーを「展開」してストーリーの詳細を表示した状態で、見積り(estimate)のドロップダウンから新しい見積りの値を選択します。

ストーリーの種類

Pivotal Trackerにはフィーチャ作業バグリリースの4種類のストーリーが存在します。

機能フィーチャ(Feature)はチームの顧客のビジネス価値を確認できるストーリーのことです。フィーチャの例としては「チェックアウトページに備考欄を追加する」「購入履歴を0.5秒で表示する」「公開APIにaddToInventoryという新しいメソッドを追加する」などがあります。フィーチャは顧客にとって価値があり、かつ見積もれるものでなければなりません。

雑用作業(Chore) は必要ではあるものの、顧客の価値に直結しないストーリーです。たとえば「位置情報サービスへのサインアップ」「自動テストが長時間かかる原因を探し出す」などが作業です。作業には「コードの技術的負債」や他のチームに依存する箇所をあらわすことにも示せます。

バグバグ(Bugs)はフィーチャに関係する振る舞いのうち、意図しない動きのことです。例えば「ログインボックスの色がおかしい」「価格が負の値をなってはならない!」などです。

リリース(L)リリース(Release)は特定のフィーチャーを構成するストーリーを区切るためのものです。リリースをマイルストーンとみなすこともできますし、何からの意図をもったバックログの区切りにすることもできます。たとえば、デモンストレーションの準備が整うとか、運用環境へのアップデートリリースをする、といったタイミングがこれに該当します。

優先順位をつける

新しいストーリーはIceboxパネルから始まります。Iceboxパネル上でもストーリーをドラッグで上下に動かして並べ替えられますが、Iceboxパネル内での並び替えは単なる整理のためでしかありません。

Backlogパネルでは優先順位に従ってストーリーが並びます。Backlogパネルでは一番上にあるストーリーが最も重要であり、最初に着手されるべきストーリーだということを意味します。ストーリーに優先順位をつけるには、IceboxパネルからBacklogパネルや現在のイテレーションを示すCurrentパネルにドラッグします。各パネルの下部には縞模様のドロップゾーンがあります。(Backlogパネルにストーリーをドロップした際に、ストーリーがCurrentパネルに移されることがあります。これはプロジェクトのベロシティに応じてイテレーションでこなす予定のポイント合計値が調整されるためです。)

既に"Started"されているストーリーは"Current"の一番上にまとまっていますが、開始されていないストーリーについては"Current"や"Backlog"にドラッグすることでいつでも優先順位を変更できます。それから、スタートしていないストーリーはIceboxに戻すこともできます。

ストーリーのワークフロー

Pivotal Trackerのある日常の風景はこうです。一日は開発者がストーリーを選ぶことから始まります。選ぶストーリーは現在のイテレーションに積まれていて、まだ"Started"でないストーリーです。このストーリの"Start"ボタンをクリックすれば作業開始です(ストーリーの"owns"プルダウンが設定されていなければ、ボタンを押した人が担当者に設定されます)

ストーリーに関する作業が完了したら、開発者は"Finish"ボタンを押します。すると"Deliver"ボタンが表示されます。プロダクトが受入テストや検収評価が可能になったら、チームメンバーがこのボタンを押します。"Deliver"ボタンが押されると、ストーリーを要望した担当者にPivotal Tracker上の表示と、メールで通知されるので、担当者はストーリーを受入れる(Accept)なのか却下(Reject)���のか���フィードバックします。

ストーリーを要望した担当者(あるいは顧客の代理となる担当者)がストーリーを受入れたら、ストーリーの表示色は緑になり、現在のイテレーションの一番上に移されます。イテレーションが終わると、受入れが完了したストーリーはDoneパネルに移されます。

ストーリーが受入れられなかった場合、ストーリーは現在進行中のイテレーションに戻されます。このとき、ストーリーのステータスは"Rejected"となり、ストーリーには"Restart"ボタンが表示されます。これにより、担当者にはストーリーを完了させるにはさらに作業が必要だということがわかります。ストーリーを受け入れない(Rejectする)場合、Pivotal Trackerは却下理由を入力を求めるプロンプトを表示します。ここで入力した内容は、ストーリーへのコメントとして表示されます。却下理由は、ストーリーの担当者にメールで通知されます。

ポイントとベロシティ

ポイントはチームごとに固有の指標であり、そのフィーチャを完了させるためにかかる労力の相対的なサイズをあらわします。Pivotal Trackerではフィーチャを見積もれます。見積りにはプロジェクトごとに採用したスケールにもとづいたポイントを使います。今のところPivotal Trackerがサポートしているスケールは次の3つです。1/2/3、1/2/4/8、そして1/2/3/5/8。見積りの対象となるのは「ビジネス価値」につながるフィーチャに限ります。BugとChoreは、通常のエンジニアリングのオーバーヘッドの一部なので、基本的には見積り対象になりません(設定で見積り対象にすることもできます)。

ベロシティはプロジェクトのアウトプットの指標です。これは直近の1から4イテレーションで受け入れられたフィーチャのストーリーポイントの平均値です。Pivotal Trackerは自動的にベロシティを算出して、それをもとにバックログにあるすべてのストーリーの完了が見込めるイテレーション数を予想します。

自動算出されたベロシティを上書きすることもできます。何らかの想定にもとづいた思考実験のために、ベロシティを上書きすることもできます。画面の右上あたりに表示されている"Velocity"の下にあるリンクをクリックしてベロシティを変更してみると、その想定下でバックログや将来のリリースどんな影響があるかを確認できます。ここで変更したベロシティは他のユーザーには見えません。ここで設定した仮のベロシティは"Revert"ボタンをクリックすれば元に戻せます。ここで上書きしたベロシティは保存されません。プロジェクトを再度開くと自動計算された値に置き換わります。

プロジェクトの開始時には、Pivotal Trackerはプロジェクト毎に設定したベロシティをデフォルト値として利用します。また、このデフォルト値は、最初のイテレーションが完了したときに、実績のストーリーポイントで置き換えられます。

リリースデッドライン

Pivotal Trackerでは、 リリースデッドラインを使うことで、動かせないリリース日に対する進捗をモニタリングできます。デッドラインを設定するには、リリースストーリーを開いて、"deadline"フィールドに日付を入力します。するとバックログの末尾に太線でデッドラインが表示されるので、どのイテレーションでデッドラインを破ってしまうのかがわかります。ある特定のリリースに含めるスコープ(リリースマーカー上のポイントの範囲)とプロジェクトのベロシティの変化に応じてリリースは移動します。これに対して、デッドラインのマーカーがそのデッドラインを迎えるイテレーションから動くことはありません。リリースマーカーがデッドラインを守れない状態になっていると、リリースマーカーは赤く表示されます。これはスコープクリープを防ぐための素晴しい手法です。「もしも○○だったら」というさまざまな仮定に基いたシナリオごとの違いを試せるのです。

リリースへのデッドライン指定を解除するには、リリースストーリーを展開して、"clear"のリンクをクリックしてください。

ストーリーを検索する

プロジェクトページの上部にある検索フィールドからストーリーを検索できます。Pivotal Trackerは、タイトル、説明(description)、タスク、添付ファイルやコメントを検索し、一致するストーリーを表示します。"Reveal"ボタンを押すと、BacklogパネルやIceboxパネルの中にある、対象のストーリーがハイライト表示されます。

複数のストーリーを扱う

複数のストーリーを選択して、IceboxやBacklogパネルに移動したり、ストーリーを削除できます。タイトル右側にある小さな正方形のボックスをクリックして複数のストーリーを選択した状態で、"Action"メニューからアクションを実行できます。"Action"メニューには他にも、ラベル付けやストーリーのエクスポート機能が備わっています。

もっと詳しく知りたい

Pivotal Trackerに関してもっと知るには、よくある質問ユーザーコミュニティでの議論を参照してください。

この翻訳文書について

この翻訳文書に関するお問い合わせは、問い合わせフォームからお願いします。翻訳文書について開発元であるPivotal Labsには問い合わせないでください。

翻訳記事の更新履歴
  • 2011-06-13: リンク切れを修正
  • 2010-04-15:訳語を統一
  • 2010-04-09: 翻訳記事を公開
記事翻訳・レビュー・公開作業のクレジット
  • 角谷信太郎
  • 柴田博志
  • 浦嶌啓太
  • 水越明哉
  • 千葉啓介
  • 梶田英邦
  • 三村益隆